骨盤底筋群のエクササイズは、尿もれの改善だけでなくインナーユニットの機能向上効果もあるため、臨床で用いているセラピストも多いと思います。
しかし、座位や背臥位になって「骨盤底筋をしめる」といったエクササイズ以外にどのような方法で骨盤底筋群にアプローチしていけばいいのか悩んでいるという声も聞きます。
骨盤底筋も他の筋と同様に「レベルに合わせた運動」「目的に合わせた運動」が大切です。
今日は、骨盤底筋群のエクササイズに関する考え方と、レベルに合わせたエクササイズ方法をご紹介していきます✦ฺ
骨盤底筋エクササイズのロードマップ
エクササイズの方法はさまざまありますが、
実際にエクササイズの選定をどのように行っているのかを書き出してみました。
まず、運動を選定する第一の判断基準として
【骨盤底筋の随意収縮ー弛緩が可能かどうか】
を確認します。
随意収縮が可能である場合
①〜④の方法を用いて
エクササイズを行っていきます。
随意収縮が困難である場合
腹横筋の収縮からエクササイズを開始していくため
❶〜❹の方法でエクササイズを行います。
骨盤底筋の随意収縮ー弛緩が可能か確認する方法
私の臨床では、
会陰腱中心を触診し
● 随意収縮の際に挙上できているか
● 弛緩ができているか で評価を行います。
■会陰腱中心の触診方法
側臥位になり患者様に肛門を指差してもらう。
その部分より一横指 鼻側が会陰腱中心
■評価方法
安静時に会陰腱中心の高さが両側坐骨の高さより2センチほど頭側にあるのが理想的な位置。それより低いと骨盤底筋群の緊張が低いと判断。
・収縮時に頭側に引き込まれるか
・しっかり弛緩できているかを評価
ちなみに、骨盤底筋群に用いる機能評価方法としてPERFECT Assessment Scheme やOxford grading system があります。
個室、触診のOKを得られればこれらの評価スケールを用いた方がBESTです。
骨盤底筋群のエクササイズ方法
骨盤底筋群の随意収縮が可能であった場合、
骨盤底筋群のエクササイズに進んでいきます。
① 重力を取り除いて行う
産後や骨盤底筋エクササイズの初期には、
背臥位、側臥位、肘を曲げた四つ這いなどの重力を取り除いた姿勢で行います。
骨盤底は子宮や膀胱などの骨盤内臓器を下から支持しているため、骨盤底筋群の収縮が弱い場合には重力を取り除いて行います。
② 座位でタオルを用いた触圧刺激を入れながら行う
タオルを丸めて両坐骨間で挟むような感じ。
そのままタオルを頭側に引き込むイメージで収縮を行います。
骨盤底筋群の収縮イメージが掴みにくい場合にはこの方法を行います。
食事中に挟んでおいて食後にエクササイズを行う、など日常生活でも取り入れやすいため、この方法を指導することが多いです。
③ 会陰腱中心を触診しながら行う
これはエクササイズの初期にはほぼ全員に取り入れています。
四つ這い、背臥位での膝立位、側臥位になっていただき【骨盤底筋の随意収縮ー弛緩が可能か確認する方法】でお伝えした方法で収縮を確認しながらエクササイズを行います。
④ 尾骨を触診しながら行う
● 会陰腱中心の触診が難しい場合
● 自分で触診しながら行いたい場合
にはこの方法を用いります。
・四つ這いや側臥位になっていただく。
・自分で触れる場合は立位や座位で。
・尾骨の先端に触れ、骨盤底筋群の収縮で頭側へ引き込まれるか確認する
骨盤底筋群の収縮が弱い方だとわかりにくいので可能であれば会陰腱中心に触れる方法をお勧めします。
腹横筋のエクササイズ方法
骨盤底筋の随意収縮が困難な場合、
インナーユニットの機能を用いて腹横筋のエクササイズから開始します。
❶ 背臥位で行う
まず呼気で会陰部が下制せずに腹横筋を収縮させられることがファーストステップです。
骨盤底筋群の弱化で尿失禁などの症状を有している場合には、ここで引っかかってしまう方が多いです。
腹横筋の収縮を背臥位で行います。
(長く細い呼気で下腹部を凹ませるイメージ)
このとき会陰腱中心に触れながら「呼気で下制しないか」を確認します。
❷ 腹横筋の収縮+胸式呼吸
❶ができるようになったら、腹横筋を持続的に収縮させながら胸式呼吸を行う練習を行います。
ここでもつまづいてしまう方が多いですが、これができるようになるとそれ以降はサクサク進む方が多いので、頑張って粘り強くエクササイズを行います。
このときも会陰腱中心に触れながら下制しないかを確認します。
❸ 四つ這いで腹横筋収縮
四つ這いで腹部を脊柱に近づけるようなイメージで行います。
❹ 座位で腹横筋収縮
抗重力位で腹横筋を収縮させていきます。
座位→立位というように負荷を上げていきます。
腹横筋エクササイズが❶〜❹まで
できるようになったら
骨盤底筋エクササイズに移行していきます。
骨盤底筋エクササイズで使えるキューイング
骨盤底筋は収縮感覚が掴めるようになるまでに時間を要します。
人によって収縮感覚が分かりやすい姿勢や方法が違うので、骨盤底筋群のエクササイズ方法でお伝えした方法をいろいろ試してみてください。
エクササイズ時に使えるキューイングもご紹介します。
肛門をしめる感じ
おしっこを止める感じ
尾骨(触れながら)をおへその方向に引き上げる感じ
タオルを頭の方向に引き上げる感じ
キューイングにプラスして【触れる】ことが一番分かりやすいです。
骨盤底筋エクササイズの効果
骨盤底筋エクササイズの方法はさまざまです。
一例として、
● 骨盤底筋群の最大収縮を1日80回以上
● 最大筋力の20〜50%で8〜12回
● 最大筋力の50%で15〜20回
などがありますが、骨盤底筋群の筋力増強に有効な回数や頻度の報告は、まだ明確にはなされていません。
エクササイズ期間は、
● 10秒間を30〜80回反復で8週間
● 6ヶ月継続したエクササイズが必要
といった報告があります。
骨盤底筋エクササイズは継続して行っていく必要があるため、必ずその旨を説明し、また日常生活で取り入れやすい運動を指導していくことを大切にしています。
今日もここまでお読みいただきありがとうございました!